タイムは肉や魚料理の臭み消しとしてお馴染みのハーブですね。
タイムは防腐・殺菌作用に優れていて、その特性はハーブの中で最も強いとも言われています。原産地である地中海沿岸の国々では古くから薬草として重宝され、様々な用途に使われてきました。
古代エジプトではミイラを作成する際の防腐剤として使われた植物の一つとされています。ギリシアでは感染症防止のためにお風呂に入れたり、空気の浄化のために神殿でタイムの枝を焚いていたとも言われています。
保存効果を高めるために料理に加えたり、悪臭や疫病から身を守るとして携帯されることもありました。中世にはタイムの強くて気品のある香りは「勇気の象徴」とされていたことから、戦士への贈り物にも添えられていたそうです。
頭をスッキリさせてくれるタイムの香りは、ローズマリーとともに勉強時に最適な精油の一つです。集中力・記憶力を発揮したいときの芳香浴として用いると良いでしょう。香りが強いので低濃度での使用をおすすめします。
そんなタイムですが、種類が非常に多いのが特徴です。シソ科に属するタイムには100種類以上の種や亜種が存在するため、抽出される精油もたくさんの種類があります。
ここでは、アロマテラピーで最も一般的に使われる「コモンタイム」についてご説明したいと思います。
精油の基本データ
英名 | Thyme |
学名 | Thymus vulgaris(ティムス・ウルガリス) |
科名 | シソ科 |
種類 | 小低木 |
産地 | フランス、スペイン、イギリス、トルコなど |
抽出部位 | 葉、花 |
抽出方法 | 水蒸気蒸留法 |
香りのタイプ | ハーブ系 |
香りの特徴 | 重厚感とフレッシュさをもつハーブの香り |
ノート | ミドルノート |
代表成分 | チモール(フェノール類) ρ-シメン(モノテルペン炭化水素類) カルバクロール(フェノール類) リナロール(モノテルペンアルコール類)など ※ケモタイプにより異なる |
コモンタイムのケモタイプと抽出方法
アロマテラピーで「タイム」というと、一般的にコモンタイム(学名:Thymus vulgaris, 和名:タチジャコウソウ(立麝香草))のことを指します。
そしてコモンタイムが育つ土壌・風土・気候といった自然環境の違いによって、成分が大きく異なったもの(ケモタイプ)になります。
コモンタイムのケモタイプ
- タイム・リナロール(Linalool)
- タイム・ゲラニオール(Geraniol)
- タイム・ツヤノール(Thujanol)
→これらは比較的作用が穏やかで使いやすい精油です。このタイプをまとめてスイートタイムと呼ぶこともあります。
- タイム・チモール(Thymol)
- タイム・パラシメン(Paracymene)
- タイム・カルバクロール(Carvacrol)
→これらは殺菌・抗ウイルスの特性がとても強いですが、肌への刺激も強く、毒性のある成分を含む可能性があるため注意が必要です。
それぞれ名前に使われている成分の含有率が高いことが特徴で、香りや作用にも違いが出てきます。
また、コモンタイムの精油は、その抽出方法によって「レッドタイム」「ホワイトタイム」の2つに区別されます。
レッドタイム
コモンタイムをそのまま抽出したもの。
刺激が強く、毒性のある成分を含む可能性があるためアロマテラピーには適しません。
フェノール類の含有量が多いケモタイプ(チモールやカルバクロール)のことをまとめてレッドタイムと呼ぶ場合もあります。
ホワイトタイム
抽出物(レッドタイム)を再蒸留したもの。
再蒸留したことでフェノール類などが除去されるため、レッドタイムよりも刺激が少なくなり、香りや作用が穏やかになります。
フェノール類の含有量が少ないケモタイプ(リナロールやゲラニオール)のことをまとめてホワイトタイムと呼ぶ場合もあります。
コモンタイムの近縁種であるワイルドタイム(学名:Thymus serpyllum)のことをホワイトタイムと呼ぶ場合もあります。
特にホワイトタイムは紛らわしいですね。同じ呼び方で違うものを指していることがあるので、購入の際は学名をチェックすることをおすすめします。
こんな時におすすめ
- ストレスが続いているとき
- ストレスによる悪夢や頭痛に
- 自分を勇気づけたいとき
- 集中したいとき
- 頭をスッキリさせたいとき
- やる気を出したいとき
- 風邪の予防に
- 冷えを感じるとき
- ヘアケアに
- 殺菌・抗菌
- 空気の浄化に
注意点
- 妊娠中は使用を避けましょう
- 子どもへの使用は避けましょう
- 血圧が高い方は高濃度での使用は控えましょう
- 敏感肌の方は注意が必要です
チモールやカルバクロールの含有率が高いものは刺激が強いため、肌への使用には不向きです。タイム・リナロールなどは作用が穏やかですが、そちらの場合も長期間の使用は控え、希釈濃度は1%以下にしましょう。
ブレンドにおすすめの精油
柑橘系、ハーブ系、樹木系と相性が良いです。そのほかラベンダー、カモミール・ジャーマン、カモミール・ローマン、オレガノ、ミルラなども相性が良いです。
記憶力や集中力を発揮したいときにはローズマリーとブレンドして香らせると良いでしょう。レモンもよく合います。
ティートリーやユーカリとブレンドした手作りスプレーはお部屋の殺菌や浄化などに役立ちます。