アロマを楽しむ上で欠かせない精油(エッセンシャルオイル)。
いろいろな精油の特徴についてご紹介してきましたが、今回は「精油の抽出方法」とそれぞれのメリット・デメリットについて書いていきたいと思います。
水蒸気蒸留法
一般的な精油の8〜9割が水蒸気蒸留法で作られています。
植物を蒸気で蒸して、芳香成分を含んだ水蒸気を発生させます。その水蒸気が冷却管を通っていくうちに液体に戻り、さらにその液体を溜めておくと、精油と蒸留水に分離されていきます。
精油は水より軽いため、上部が精油になります。
上部:精油
下部:蒸留水
この下部の蒸留水は「芳香蒸留水(フローラルウォーター)」と呼ばれ、精油とは別に販売されています(ローズウォーターやラベンダーウォーター、ジャーマンカモミールウォーターなど)。フローラルウォーター は水に溶けやすい性質で刺激が少なく、直接肌に使用することもできます。
メリット
- 不純物が混ざりにくい
- フローラルウォーターも作られる
デメリット
- 抽出過程で水と熱に晒される
→デリケートな香りには向いていない(ジャスミンなど)
→果物は熱を加えると香りが変わってしまう
圧搾法
オレンジやレモンなど、柑橘系のほとんどの精油は圧搾法で抽出します。
過去には手での圧搾や、絞り汁をスポンジに染み込ませたり、果皮に傷をつけることで汁を採り、それを溜めて精油と分離させるといった方法が行われていました。
現在は、ローラーや遠心法による機械で圧搾して精油を抽出します。
低温での抽出のため、果物の香りを損なわずに得ることができます。
メリット
- もぎたてのフレッシュな香りを得られる
デメリット
- 果皮の絞りかすや雑菌が入ってしまう
→劣化が早い
油脂吸着法
ローズやジャスミンの花から精油を抽出する伝統的な方法ですが、現在では市販の精油にはほとんど使わない製法です。
油脂に芳香成分を吸わせるという方法で、牛脂や豚脂の混合物や、オリーブ油などを用います。
常温の油脂を使う場合を冷浸法(アンフルラージュ法)、60〜70℃に加熱した油脂を使う場合を温浸法(マセレーション法)と言います。
冷浸法(アンフルラージュ法)
ガラス板などのプレートに油脂を塗り広げて、そこに植物を敷き詰めて花の香りを移します。
香りが移った油脂を「ポマード」と呼び、そのポマードをエチルアルコールと混ぜて香りを移し、エチルアルコールを蒸発させることで精油を得ます。
温浸法(マセレーション法)
プレートではなく釜などを使用して、そこに油脂と植物を入れてポマードを作ります。
そのポマードをエチルアルコールと混ぜて香りを移し、エチルアルコールを蒸発させることで精油を得ます。
メリット
- デリケートな香りに向いている(冷浸法)
デメリット
- 油脂が残留してしまう
揮発性有機溶剤抽出法
油脂吸着法に変わって利用され始めた方法です。
こちらは油脂でなく、石油エーテルやヘキサンといった揮発性の有機溶剤を使います。
釜などに溶剤と植物を入れて、常温で芳香成分を溶かし出します。
溶かし出した後に植物と溶剤を取り除くとコンクリートと呼ばれる固形のワックス状のものになります。このコンクリートの内訳は芳香成分が約60%、植物に含まれる天然のワックス成分などが約40%となっています。
このコンクリートをエチルアルコールと混ぜて分離させることで芳香成分のみを抽出して、さらにエチルアルコールを蒸発させることで精油を得ます。
メリット
- デリケートな香りに向いている
デメリット
- 溶剤が残留してしまう
油脂吸着法や揮発性有機溶剤抽出法で抽出された精油は「アブソリュート(Abs.)」と呼ばれています。ベンゾインなど樹脂系の場合はアブソリュートではなく「レジノイド」と呼びます。
レジノイドは化粧水や香水の保留剤としてもよく用いられます。
超臨界流体抽出法
芳香成分を液体ガスで取り出すという、近年開発された新しい製法です。
二酸化炭素などの液化ガスに高圧力を加えて超臨界状態(個体と液体の両方の性質をもつ流体)にして、これを植物に浸透・拡散させることで、溶剤などを使うことなく芳香成分を取り込むことができます。
そして圧力を戻して気化させると芳香成分だけが残ります。これをエキストラクトと呼んでいます。
メリット
- 低温での抽出ができる
→デリケートな香りにも向いている - 抽出の効率が良い
- 不純物が混ざりにくい
デメリット
- 装置が高価なので一般的ではない
まとめ
代表的な抽出方法をご紹介しました。
一般的には「水蒸気蒸留法」「圧搾法」「揮発性有機溶剤抽出法」が多く使われています。アブソリュートやレジノイドについても知っておくと、購入の際に役立つでしょう。